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Less is more ? -1/5-
ソロデビュー10周年を迎える、Diggy-MO'の新たな挑戦。Club D会員限定、小規模なホール、1日2回公演、全員着席、ジャズトリオ形態のバンド、そして意外なカバー。新鮮な驚きと興奮をもたらした“ Tiny Concert ”は、いかにして作られたのか。Diggy-MO’の帽子の中身を探っていこう。
◆Tiny Concert 徹底解析~コンセプト
「ナチュラルな雰囲気の中で自分流にできるならっていうのが大事だった」
――そもそも、なぜこういう形のコンサートをやろうと思ったのか。
「MCでも思わず言っちゃったけど、もともとはああいう立派な会場でやるつもりじゃなくて、ジャズ・バーみたいなところで、食事もできたりする感じのね、そんなイメージだったんだよね」
――はい、言ってましたね。
「そんなに具体的に考えてたわけじゃないんだけどさ、いつかそういう感じでやれたらって」
――結果的にああいう形になって。
「でもそれはそれでとても良かった」
――よく思い返してみると、まったく新たな試みですよね。とは言え、曲単位で考えていけば、実はこれまでにそんなようなアプローチがあってもよさそうな。
「まぁ、タイミングってあるよね(笑)。それがようやくリアリティをもって考えられる時期が来たのかなって。あと、以前TOKUさん(ジャズシンガー&フリューゲルホルンプレイヤー)のライブによく誘っていただいては通っていて、それを観てはいいなぁとか思ってたり。だから、演奏したりしゃべったりも、ナチュラルな雰囲気の中で自分流にできるならっていうのが大事だった」
――ピアノトリオという編成も、最初から頭にあった。
「ピアノトリオと言ってしまうとまぁジャンル的になっちゃうから、自分の場合は、そんなモードだけど、とはいえいろいろやるからね、みたいな。そして最初のステップとしてシンプルなメンバー構成は必然的に。逆にそれ以外はいきなりだとハードル高いし、そんな必要もないかな。基本的なことをクリアしてビルドアップすべきだと思った。言っても全体としてボーカル・ミュージックだし、ジャズのインストバンドとはスタートが違う。それを考えると、まずこれで必要に充分だよね」
――例えば、MTVのアンプラグドとか、ああいう方向性もヒントにしたりした?
「ああ、なるほど、でもそれはちょっと違うかもな。MCの中でもしかしたらアンプラグドっていう言い方はしたかもしれないけど、こういう形式のコンサートを便宜的に説明するのはそれが一番わかりやすいからね」
――でもああいうイメージではない。
「そうだな、そう、なんかね、もっともっと猥雑(わいざつ)な感じかも」
――ほう。と言うと?
「実際シャーデーの「Smooth Operator」をカバーしたけど、あのビデオクリップっていい感じに猥雑でしょ? あとスパイク・リーの映画『Mo' Better Blues』の演奏シーンとか…、あんな気分。自分の曲では「Bayside Serenade」の歌詞のシチュエーションのイメージとかね」
――以前のインタビューで、遊覧船でのクルージングでジャズバンドが演奏していてと。
「そう、人々はそれを観てたり観てなかったりする。まさに。大げさに言うと、当初としては誰も聴いてないんじゃないの?っていうぐらいの中でやる感じでいたんだけどさ」
――いや、まさか(笑)。
「そう?(笑) それにしてもいざステージに出たら会場全体のみんなの緊張感がすご過ぎて…、」
――すご過ぎて?
「ちょっと引いた… ウソ(笑)」
――(一同)あははは。
「まぁでも、ほんと思わず、“こういうつもりじゃなかったんだけどね”って(笑)。でもさ、よくよく考えたらそりゃそうなるよね」
――そうですよ(笑)。でも結果すごく楽しかったです。
「ほんと? よかった」
――MCも印象的でした。何を言うか、考えていた?
「1stステージの冒頭だけね。“10年目に因んで何か今までと違うこともやろうと思って”っていうさわりのテーマ性だけは最初に伝えようかなみたいな」
――へぇ。でも今回の場合は重要だったのかもしれませんね。
「そうなのかな、まぁピーターラビット(映画「ピーターラビット」の日本語吹替版にてDiggyが挿入歌で担当)に参加したよっていう話と混ぜ混ぜしていい塩梅で(笑)。キャッチーでしょ?」
――2曲演奏してすぐにそのMCがあったおかげで一気にみんなの緊張もほぐれましたね。
「かな。それと、実はピーターラビットの映画製作の関係者の方々が一公演目にいらしてくれてたこともあって、何か楽しくお礼できないかなとか(笑)」
――へぇ、それでちゃんと宣伝も含めて。何気ないリップサービスにも意図があったんですね。それにしても他の場面でも結構リラックスして、いろいろとしゃべっていました。" Tiny ”なコンサートだから、フレンドリーなトークも必要だと?
「自分の場合、話したくなったら話すのかな…みたいな。でもリハのときからなんとなくそんな気分だったから、事前にスタッフには、もし俺が話してても不安にならないで付き合ってね、って伝えてました(笑)」
――あははは。それに服装もラフでしたし、しかも髭面で出てきたし。あの髭は?
「えっと、剃り忘れた」
――真面目に答えて(笑)。
「アハハハ。あ、そういえば打ち合わせの時、服装についてやっぱりこういう場合だとスーツとかを着るの?って訊かれたな。いやまさかって」
――でもこれまでにDiggyさんにも、そういう衣装の時も別にあったと思いますけど。
「かつてのチェット・ベイカーがGジャン姿で出てきて、かっこいいじゃん。まぁ俺がそんなつもりがあるわけじゃないんだが…、というか、なんかこのトリオのコンサート感に、いかにもな格好で現れるのがちょっと恥ずかしかっただけです(笑)」
――どのみち髭とは直結しませんね(笑)。
「あらほんと? 気をつけなきゃ(笑)」
――Tiny Concertというネーミングはどこから? わりとサクッと決まったんですか?
「そうね、候補が4,5個あったんだけど、そう、Squareってのを入れたのもあったな。そう、初め“ Tiny Square ”にしようかなって思って、でもちょっと格好良すぎるなっていうのと、あと略すとTスクエアになっちゃう(笑)。なんか、もうちょっとオープンな雰囲気がいいなって思って」
――“ Tiny Concert ”。
「そう。“ Tiny ”ってとってもチャーミングでしょ?」
à suivre
Diggy-MO'
Writer : Hideo Miyamoto